高等教育ニュース(2026年7月23日ー7月24日)
2026年7月24日(金)|日本時間
1.大学再編・募集停止
1-1 甲子園大学、2027年度以降の学生募集を停止
最重要|大学全体の募集停止|公表・報道 2026年7月23日
兵庫県宝塚市の甲子園大学は、2026年度入学生を最後に、2027年度以降の学生募集を停止する。急速な少子化と18歳人口の減少を背景に定員割れが続き、大学存続のための検討を重ねた末、7月14日の臨時理事会で決定した。
1967年4月に栄養学部を開学。2011年に心理学部を設置し、現在は2学部と大学院2研究科を擁する。
在籍者は273人。別報道では2026年4月1日現在、収容定員の約3割とされる。
大学は、全在学生が卒業するまで教育を継続し、進学・就職活動を含めて支援すると表明している。
大学院は、博士課程の募集を2026年度まで、修士課程の募集を2027年度までとする旨が報じられている。
系列の甲子園短期大学はすでに2026年度以降の募集停止を決定済み。一方、中学校・高校、小学校、幼稚園は教育活動を継続する。
2026年3月27日の「栄養学部食創造学科」の募集停止発表は一学科の措置。今回報道されたのは大学全体の学生募集停止であり、別の決定として扱う必要がある。
ポイント:募集停止後の焦点は、在学生への授業・実習・資格取得・就職支援、教職員体制、学籍記録と証明書発行、卒業生対応、大学院の終了時期、施設・資産の扱いである。単なる入試ニュースではなく、学校法人の撤退管理と学生保護の重要事例として継続確認が必要。
サンテレビ:甲子園大学が2027年度以降の学生募集停止
MBS/TBS NEWS DIG:在学生が定員の約3割、来年度以降募集停止
甲子園大学:栄養学部食創造学科の学生募集停止(今回の全学停止とは別件)
甲子園大学:沿革・大学概要
1-2 香川大学、法・経済両学部の夜間主コースを2028年度から募集停止
公式発表|2026年7月22日
香川大学は、法学部と経済学部の夜間主コースについて、2027年度入試を最後に、2028年度以降の学生募集を停止する。編入学生募集も停止対象となる。
両コースの入学定員は各10人。勤労学生など昼間の通学が難しい層に夜間の教育機会を提供してきた。
社会構造とニーズの変化、通信教育・オンライン教育の普及などにより志願者が減り、入学定員を下回る年度が発生していた。
在学生が卒業するまで、必要な授業・指導体制と教育・支援を継続する。
2027年度募集要項は2026年8月下旬に公表予定。
ポイント:全学閉学ではなく小規模教育コースの整理である。社会人の学び直し需要が消えたのではなく、夜間通学型からオンライン、短期履修、履修証明、マイクロクレデンシャルへ提供形態が移る構造変化として読むべき。
香川大学:法学部及び経済学部の夜間主コース学生募集停止
1-3 姫路獨協大学の2027年度入試情報は公開時期を調整
要注視|募集停止の確定発表ではない
姫路獨協大学は、2027年度大学案内・入試情報の公開について案内を更新し、7月26日のオープンキャンパスを中止した。大学サイトでは入試情報の公開予定を7月31日としている。
5月22日の大学発表は、在学生の教育学習面を今までどおり維持・継続すると説明している。
現時点で、大学全体の学生募集停止を公式に確定した発表は確認できない。
入試日程・募集単位・募集人員の確定情報は、大学が公表する2027年度募集要項で確認する必要がある。
ポイント:経営見直し報道と入試情報の遅れは監視対象だが、未確定情報を「募集停止」と断定してはならない。正式な募集要項、理事会決定、文部科学省への報告の有無を追跡する。
姫路獨協大学:入試情報ページ
姫路獨協大学:2026年5月22日一部報道について
再編動向の背景
旺文社教育情報センターの集計を紹介した報道では、2026年度の日本の大学数は796校。統合・学生募集停止で3校減る一方、6校が新設され、全体では3校増えた。新設と撤退が同時進行しており、大学数だけでは需給調整の実態を捉えにくい。
今回の2件は性質が異なる。甲子園大学は大学全体の募集停止、香川大学は2つの夜間主コースの募集停止である。「大学」「学部」「学科・コース」のどの単位かを区別して追う必要がある。
ReseEd:日本の大学796校、統合・募集停止も3校増
2.政策・大学経営
2-1 大学資産運用の促進・高度化へ、文科省・経産省がガイドブック
直近最重要|公式発表 2026年7月22日
文部科学省と経済産業省は、大学の財源多様化と教育研究基盤の安定を目的に、資産運用の目的・目標・方針、組織体制、モニタリング、情報開示を整理した共同ガイドブックを公表した。
調査対象609法人の運用資産は約10.3兆円。
大規模学校法人でも、現預金・債券の比率が8割超の法人が約6割とされる。
理事会が運用目的、目標リターン、許容リスク、基本ポートフォリオ、評価期間を明確にすることを重視。
単年度損益だけでなく、時価ベースのトータルリターンとインフレ控除後の実質リターンでの評価を促す。
外部運用機関を利用しても判断を丸投げせず、利益相反管理、委託先評価、情報開示を行う。
ポイント:高い収益を追うこと自体が目的ではない。学納金依存が高まる少子化局面で、教育研究の長期財源とリスク管理を理事会の責任で設計する経営課題である。
文部科学省:大学の資産運用の促進・高度化に向けたガイドブック
2-2 国立大学法人運営費交付金、第5期の中間まとめ案を審議へ
会議予定|文部科学省|2026年7月27日
文部科学省は、第5期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会を7月27日に開催する。議題は中間まとめ案。
基盤的経費の安定性と、ミッション・成果に応じた配分の均衡が焦点。
物価・人件費上昇、教育研究の継続、地域機能、研究力強化を配分方式にどう反映するかが注目される。
大学側は中間まとめ公表後、中期計画のKPIと複数年度の財務シナリオを照合する必要がある。
ポイント:募集環境が悪化する中、国立大学でも基盤経費、授業料、外部資金、施設更新を一体で見る必要がある。単年度の効率化だけでは教育研究基盤を維持できない。
文部科学省:検討会(第4回)開催案内
2-3 私立大学の収容定員変更、2027年度からの申請一覧を公表
直近政策|文部科学省|2026年7月17日
文部科学省は、2027年度からの私立大学等の収容定員変更に係る学則変更認可申請一覧を公表した。審査結果ではなく、今後の定員再配置や学部転換を追うための基礎資料である。
少子化下では、地域別18歳人口、分野別人材需要、留学生・社会人の構成、教員配置、施設固定費を一体で検討する必要がある。
募集停止と新設・改組が同じ法人内で同時に行われる場合があり、組織名だけでなく定員の純増減を確認することが重要。
ポイント:大学再編は閉学だけではない。定員移管、学部改組、大学統合、共同教育、法人統合という段階的な選択肢を区別して把握する。
文部科学省:2027年度からの私立大学等の収容定員変更申請一覧
文部科学省:全国大学一覧
3.本日の研究・産学連携
3-1 短時間の加圧でiPS細胞由来人工心筋を成熟化
本日発表|理化学研究所・東京大学医学部附属病院ほか|2026年7月24日
共同研究グループは、ヒトiPS細胞由来の人工心筋組織に50kPaの圧力を1日1時間、3日間加える「加圧トレーニング」により、心筋の成熟度を高めた。
心筋細胞の整列、ミトコンドリア量、酸素消費、ATP産生、カルシウム制御が改善。
拍動頻度の上昇に伴い収縮力が高まる、成人心筋に特徴的な関係も確認した。
再生医療だけでなく、薬効・毒性試験、疾患モデルの信頼性向上への応用が期待される。
ポイント:次の論点は製造の再現性、スケールアップ、品質規格、GMP対応、移植安全性。研究成果から臨床・産業実装までの工程設計が必要。
理化学研究所:圧力で鍛える次世代iPS人工心筋製造法
東京大学医学部附属病院:プレス発表一覧
3-2 筋分化に必要な選択的スプライシング調節機構
本日掲載|東京大学大学院農学生命科学研究科|2026年7月24日
東京大学大学院農学生命科学研究科は、筋分化に必要な選択的スプライシング調節機構の研究成果を掲載した。
選択的スプライシングは、一つの遺伝子から異なるRNA・タンパク質を作り分ける仕組み。
筋形成、筋再生、筋疾患の理解につながる基礎的テーマ。
確認時点では詳細ページを取得できなかったため、本報告では掲載タイトルを超える機序や応用を推定していない。
ポイント:疾患関連性、バイオマーカー、創薬標的、細胞・動物モデルでの再現性が今後の評価軸。
東京大学大学院農学生命科学研究科:ニュース一覧
3-3 柔軟に曲がっても先端がぶれにくいロボット構造
本日発表|電気通信大学|2026年7月24日
電気通信大学は、細いロッドを組み合わせ、途中は柔軟に曲がりながら先端の向き・位置を安定させる構造を、8月27~28日の大学見本市2026で展示すると発表した。
重量物を先端で保持しつつ、人や障害物との接触時にも安全に作業を継続するロボットアームを想定。
製造、物流、災害対応、狭所作業など用途ごとの要求仕様が実用化の鍵。
ポイント:展示を単発広報で終わらせず、NDA、PoC、共同研究、ライセンス交渉へつなぐ案件管理が重要。
電気通信大学:大学見本市2026への出展
4.教育・学生・社会連携
4-1 3大学連携のTechnology Creatives Programが開講
本日開講|東京科学大学・多摩美術大学・一橋大学|2026年7月24日
技術、デザイン、経営を越境する社会人向け価値創造人材育成プログラム第5期が開講した。期間は2027年1月30日まで。
必修60時間と自由選択12時間で構成。
東京科学大学の履修証明プログラム、文部科学省の職業実践力育成プログラム、厚生労働省の特定一般教育訓練の対象。
定員20人、受講料49万5,000円。
ポイント:大学間の専門性、履修証明、職業能力開発、受講費支援を束ねたリカレント教育モデル。単発講座ではなく、能力証明まで含む設計が特徴。
東京科学大学:Technology Creatives Program 第5期資料
4-2 生成AI活用を教員向け継続型FDとして扱う
本日開催|東京大学 吉田塁研究室|2026年7月24日
教育分野を中心とする生成AIの最新動向を扱うオンラインイベントが開催される。解説、意見交換、個人ワーク、録画・資料公開を組み合わせる。
生成AI対応は操作研修から、授業設計、評価、学習者の主体性、研究倫理、データ管理を継続更新するFDへ移っている。
大学は一律禁止・自由利用の二択ではなく、学習目標ごとの利用条件、作成過程の記録、引用、個人情報の扱いを定める必要がある。
ポイント:生成AIの論点はツール導入ではなく、何を学生本人の能力として評価するかという教育設計の再定義。
東京大学 吉田塁研究室:開催案内
4-3 情報系女性学生のキャリア形成を企業と支援
本日開催|東京大学大学院情報理工学系研究科|2026年7月24日
東京大学大学院情報理工学系研究科は、女性の学部生・大学院生を対象に、企業とのキャリアセッションを開催した。
採用を前提とせず、就職活動の流れ、仕事内容、プロジェクトの進め方を伝える。
理工系女性人材の拡大には、入口施策に加え、在学中の職業理解、ロールモデル、研究と就業の接続が必要。
ポイント:ダイバーシティ施策を入学者数だけで評価せず、学修継続、専門職就業、大学院進学、職場定着まで追う必要がある。
東京大学情報理工学系研究科:キャリアセッション
5.海外高等教育
5-1 豪州で若年層の大学進学需要が低下
本日報道|Times Higher Education|2026年7月24日
複数統計を用いた分析で、豪州の若年女性の大学進学開始率は2017年の52%から前年38%へ低下し、若年男性も2021年のピークから10ポイント超低下したと報じられた。
政府は2050年までに就業年齢人口の80%が高等教育または職業教育資格を持つ目標を掲げる。
生活費、学位の費用対効果、雇用見通し、職業教育との比較が進学判断に影響する。
ポイント:18歳人口が減る日本では、募集広報だけでなく、学修成果、就業成果、費用、生活支援、柔軟な履修経路の設計が不可欠。
Times Higher Education:豪州の高等教育需要
5-2 豪州研究費制度、15制度から6制度へ簡素化
公式発表|Australian Research Council|2026年7月22日
豪州研究会議は、National Competitive Grants Programの最終報告を公表した。現行15制度を6制度へ整理し、若手研究者、先住民研究、産業・利用者との連携、挑戦的研究を強化する。
最初の新制度Exploreは2027年3月に公募開始予定。
高リスク・高リターンの新規アイデアを支援。
若手研究者の雇用安定と研究費制度の簡素化を同時に扱う。
ポイント:日本でも競争的資金の申請負担、若手雇用、挑戦性、産業連携を一体で評価する比較材料となる。
Australian Research Council:NCGP最終報告
5-3 英国大学の財政悪化、機能分化・再編論が強まる
直近報道|2026年7月23日
英国では、コスト上昇、国内需要の変化、留学生収入の不安定化により、現行の大学経営モデルが持続困難との分析が強まっている。
世界的研究大学、地域中核大学、地域密着大学、小規模専門大学などへの機能分化が提案されている。
成長前提の財務計画から、共同調達、施設共有、科目連携、合併・退出を含む複数シナリオへの転換が論点。
イングランドの大学規制機関には2026–27年度の配分方針が示された。
ポイント:日本の再編でも、単なる赤字削減ではなく、何を残すか、どの地域・分野に責任を持つか、誰と共有するかという機能選択が必要。
Times Higher Education:英国大学財政と機能分化
Office for Students:2026–27年度の配分方針
5-4 ビザ制約をオンライン教育・TNEで補う英国大学
直近報道|2026年7月23日
一部諸国からの学生ビザ申請停止を受け、英国9大学が大学院19枠を確保し、オンラインまたは国境を越えた教育で提供すると報じられた。
国際化を来日・キャンパス在籍だけに依存すると、外交、移民政策、紛争、送金制約に弱い。
オンライン共同学位、現地提携校、短期滞在、単位互換を組み合わせた継続性が必要。
ポイント:日本の留学生戦略でも、送出国の分散と教育提供方法の複線化を危機管理として位置づけるべき。
Times Higher Education:ビザ制約対象学生への奨学金
6.横断整理と確認事項
募集停止記事を読むときの確認軸
確認軸
確認内容
対象単位
大学全体、学部、学科、コース、大学院のどれか
最終募集年度
いつの入学生が最後か。編入学・大学院を含むか
在学生保護
授業、実習、資格、就職、転学、奨学金を卒業までどう保証するか
法人の継続
他の学校、法人、附属機関は継続するか
閉学時期
募集停止と閉学は同義ではない。廃止認可・届出の時期
卒業後対応
証明書発行、学籍記録、同窓会、校地・資産の承継
情報の確度
公式発表、理事会決定、報道、観測を区別
本日の実務的示唆
入試・IR:志願者数だけでなく、充足率、歩留まり、休退学、学費負担、就職成果を学部・学科・コース別に追う。
経営企画:募集停止、定員縮小、改組、共同教育、法人統合の複数シナリオを10年収支で比較する。
教学:募集停止を決めた場合、開講科目の維持、実習先、教員退職、資格課程、学生相談を卒業年度まで逆算する。
広報:対象範囲と最終募集年度を見出しで明示し、在学生・受験生・卒業生への説明を分ける。
理事会:決定前から、学籍記録、証明書、卒業生、施設、寄付金、債務、教職員の承継計画を用意する。
調査上の留意点
甲子園大学の全学募集停止は、7月23日の地域報道2社で大学発表を確認した。大学公式サイトの当該全学発表ページは検索・取得上の制約があり、本文確認には報道を用いた。
一方、同大学公式サイトで確認できる3月27日の発表は栄養学部食創造学科だけの募集停止であり、今回の全学募集停止と混同していない。
姫路獨協大学は入試情報の調整を確認したが、全学募集停止の確定情報としては扱っていない。
本資料は2026年7月24日日本時間の公開情報に基づく。今後の公式発表・募集要項で更新される可能性がある。
出典一覧
主要一次・準一次情報
甲子園大学:大学公式サイト
サンテレビ:甲子園大学募集停止
MBS/TBS NEWS DIG:甲子園大学募集停止
香川大学:夜間主コース募集停止
姫路獨協大学:入試情報
文部科学省:大学資産運用ガイドブック
文部科学省:国立大学法人運営費交付金検討会
理化学研究所:iPS人工心筋
Australian Research Council:研究費制度改革